百合はカウンターの中から椅子を引っ張り出し、カウンターの外側に座った。

俺はカウンター越しに、百合の正面に座ると弁当とお茶のペットボトルを取り出した。


2つ…?


「私もまだ食べてないの。グラタンは私のね」

百合はこれが最後の晩餐となるとも知らず、久し振りの2人の夕食に明るい笑顔を見せていた。


プラスチックの蓋をバリバリと開け、まだ少し温かい豚カツに手を着けた。

チラリと百合を見ると、ジッと俺を見詰めていた…

「でも、ジュエリーが売れる様になって、本当に良かった。
一時はどうなるかと心配だったけど、もう大丈夫よね。元々、敏樹には才能があったんだし、当然と言えば当然の事なんだけど…

でも、敏樹の作ったジュエリーが売れると、やっぱり嬉しい」


何を、白々しい事を言っているんだ…

俺を高山に売っておきながら、嬉しいだと?
ふざけるな百合!!


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