「犯人が耳を収集していたとすれば、この一連の事件には、もう1人犯人がいるという事になります」
「ど、どうしてですか?」
俺は草壁さんの目を力強く見詰めると、一気に話した。
「犯人は耳にしか興味の無い、特殊な人間です。その犯人が、目的以外の物に手を出す筈がないでしょ?
それに、今更捜査を撹乱させる必要もありません。
つまり…
耳を切り落とすと同時に、手を持ち去った犯人は、耳切り魔にの犯行に見せかけた別人ですよ」
草壁さんは俺の話に聞き入り、微動だにしていなかった。俺の話に迫力と説得力があり、何も言い返せなかったのだろう。
それはそうだ。
全部、本当の事なのだから…
「でもそれって…
高山さんが最初から言っていた推理と、ほぼ同じですよね?」
「高山さん…
多分、一番犯人に近付いていると思いますよ。
あの人なら、犯人を捕まえるでしょう」
生きてれば…な。
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