「人間らしさか・・・」

手元にある指輪を見詰めながら、誰に伝えるでもなく言葉を吐き出す。

ドイツからどの様にしてここに辿り着いたのか、そんな事はどうだって良い。考えるだけ時間の無駄だ。

これが本当にサタン・リングだとすれば、人間らしい何かを失う代わりに、何かの能力を得ると言われるアイテムだという事だ。


俺が手に入れたい力は、金属や石を自在に加工する能力だ――

他人から見れば大した事ではないかも知れない。だが、中学校を卒業して直ぐイタリアに単身でアクセサリー修行の留学をした俺にとっては、この分野で認められなければ生きている意味すら失ってしまう大問題なのだ。


俺はデザインだけをする為に高校にも進学せず、親の反対を押し切ってまで留学した訳ではない。俺は自分がデザインをした物を、この手で形にしたいんだ。

その為なら俺は――・・・