最後に狙う指だ。
優雅にストーリーを描き、ドラマチックに奪取したいものだ。
だがその前に、俺にはまだやらなければならない事がある――
そしてその日、店を閉めようと扉に札を掛けようとしていると、急いで階段を下りてくる人がいた。
時刻は既に20時を過ぎている。こんな時間に一体、誰が来たんだ?
そう思いながら見上げていると、薄暗い階段から声がした。
「葉山さん!!」
「草壁さん?」
なるほど、どうやら駅のコインロッカーで野崎の隠していた物を見付けたららしい。
息を切らして階段を下りて来た草壁さんは、俺の前に立つと笑顔を見せた。
「あ、あのですね…」
「まあ、とりあえず中へどうぞ。ここで話すと、マズイ事もあるでしょう」
俺は穏やかに笑いながら扉に閉店の札を掛け、草壁さんを店内に招き入れた。
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