「分かった…
手を出してくれ」

俺は神妙な面持ちでそう言うと、ズボンのポケットから1万円札の束を引っ張りだした。


それを見て、野崎の表情が一気に緩んだ。

「さっきは、大声出して悪かった…

俺達は同じ種類の人間だ。俺も仲間を警察に売ったりなんかしないから、安心してくれ」

そう言って、野崎は右手を差し出した…



その瞬間――

床に重い物が落ちる様な鈍い音がして、野崎の動きが止まった。


「て、手が…
俺の手が――!!」

野崎は一体自分の身に何が起こったのか理解出来ないまま、床に転がった右手を拾うと、必死に腕にくっつけようとしていた。


俺はそんな野崎に、優しい口調で話し掛けた。

「不思議だろ?
今、どうやって自分の右手が切断されたのか、全く分からなかっただろ。

それに、痛みはあっても、血は出ないしな」

「お、俺に一体何をしたんだ!?
こんな事、有り得ねえ!!」


野崎の顔面は蒼白になり、後退りしながら出口へと向かおうとしていた。


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