野崎は全く無警戒で店内に入ると、俺を見てニタリと笑った。
俺は野崎の背後に回ると、扉の鍵をしっかりと閉めた。これで邪魔者が入る心配はない…
「しかし、あんたも俺を利用するとは、なかなかやるな」
野崎は馴れ馴れしく俺の肩を叩くと、弱みを掴んだとばかり上目遣いで嫌な笑い方をした。
俺はその醜い顔を見て、道路で轢かれた猫の死骸から沸き立つ死臭を臭った時の様な、猛烈な吐き気を覚えた。
「まあ、とりあえずこっちに…」
俺は灯りの消えた薄暗い店内から、作業場へと野崎を案内した。
野崎はダボダボのジーンズのポケットに両手を突っ込んだまま、俺の後を口笛を吹きながらついて来た。
作業場に入ると、中心に置いてあるアンティークデスクの上に並ぶ手を見て、野崎は一気に興奮して声のトーンが上がった。
「あんたが持ち去った手って、これなのか!?
スゲェな、まるで身体についていた時と同じ状態だ!!」
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