仕方ない。
本来なら、野崎にはもう少し泳いでおいて欲しいのだが…
俺は受話器を置くと、カウンターの下から黒いゴミ袋を3枚取り出すと、作業場へと運んだ――
その後は特に変わった事も無く、20時前には閉店した。
俺はそれから直ぐ、作業場で指輪作りに集中した。今日は来店客が多く、店に並べていた指輪が全て売れてしまていたのだ。
指輪を1つ完成させ2つ目の指輪を作り始めた時、ガタガタと激しく扉を叩く音がした。
作業台の隅置いてある時計を見ると、22時を差していた。
「野崎だな…」
俺は作業場の扉を開けたまま店に行くと、外にいる人間に声を掛けた。
「どちら様ですか?
今日はもう閉店したのですが」
外にいる人間は、少し苛立ちながら小声で答えた。
「俺だよ、野崎だ。
早く開けてくれ!!」
俺は鍵を開けると、満面の笑みを浮かべて野崎を招き入れた。
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