「そこを動くな!!」

ドラッグストアの従業員らしき男が、神の使命を受けた俺に対し、正義を振り翳して近寄って来た。

愚かな……


駆け寄って来る男の足音が徐々に大きくなり、俯き加減の俺の視界に白い靴が入った。

「お、お前…
何を手に持っているんだ?
て、手なのか――!?」


男が動揺した一瞬の隙に、俺は空いていた右手を顔面を目掛けて振った――


「うぐぁっ!!」


男の叫び声と共に、咄嗟に隠そうとした左手の指が3本アスファルトの上で跳ねた。

指を失った激痛に、男はその場にうずくまり、駐車場の車止めにぶつかるまで転げ回った。

「う、う…ぐ……
目…目が――!!」


俺は顔を覆った左手ごと、左側のこめかみから右側のこめかみまでを一気に切り裂いたのだ。

見られてしまった以上、その目をここに残していく訳にはいかなかった。


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