その瞬間――
肘から先がボトリとアスファルトの上に落ち、女子高生は膝から崩れ落ちた。
俺は口を塞いでいた手を放したが、口からは嗚咽が溢れ出るだけで声など出なかった。
それはそうだ。
突然手を切断されて、悲鳴を上げられる者などそういる筈がない。
俺は柵の方に向かって呻き声を上げ始めた女子高生を、背後から思い切り蹴り飛ばした。
振り返られでもすれば面倒な事になる。気力を削ぐ為の一撃だ。
しかし、その念押しの蹴りで女子高生が柵に激しく激突し、激しい衝撃音が駐車場に響き渡った――
「何をしているんだ!!」
その時、ドラッグストアの方から男の怒声が聞こえた。
その方向を見ると、建物の奥側にある従業員の通用口らしき場所に、人影が見えた。
俺は悠々と左手を拾い上げると、帽子を更に深く被り直した。
面倒な事になった。
しっかりと、俺の姿を見られてしまった…
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