いや、動揺するな…
落ち着け、冷静に状況を判断するんだ。
唯一、俺を疑っていた高山は、作業場のゴミ袋の中だ。草壁さんも、俺を犯人だと思っている訳ではなく、意見を求めているだけだ。
大丈夫だ。誰も俺の事に気付く筈はない。そうだ、俺の意思は天意――…
「どうなんですかね…
よく分かりませんが、今回は犯人がわざと手だけを持ち去ったのではないですか?
そう考える方が、無難な気がしますが…」
草壁さんはフゥと溜め息を吐くと、腰に手をやり俯いた。
「上司も同じ事を言っていました。
やっぱり、そうなんですかね?」
「草壁さん、大丈夫ですよ。犯人は必ず捕まりますから…」
「そう…ですよね。
よし、聞き込みを続けます!!」
「何かあれば、直ぐに連絡しますから。
頑張って下さいね」
俺は店を出て行く草壁さんの背中を見送りながら、猛烈に悔やんでいた。
有頂天になって、注意を怠ってはいけない。第2の高山を出現させない為にも――
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