俺は走って先回りをすると、バス通りまで出た。
そして、女性店員の歩調に合わせ、路地の入口でスレ違う様に歩いた。
20メートル、15メートル…
徐々に大きく見えてくる、女性店員の左手。
10メートル、5メートル…
手が熱くなってきて、挙げ句の果てに激しく震えてきた。
間違いなく、この女だ!!
俺は俯いて近付くと、スレ違う瞬間に女性店員の左手を、右手で力任せに掴んだ。
そして悲鳴を上げる間も与えず、左手で肘に手刀を振り下ろした――
左手は血しぶきも、音すらも無く身体から切り離されると、俺の手に大切に握り締められた。
悲鳴が聞こえ、人だかりが出来た頃には、既に路地の暗闇に溶け込んでいた。
俺はその手を服の中に隠すと、裏道を選んで自分の店へと全力で走った。
簡単な事だ。
今夜はこの手に、思う存分指輪を飾ろう!!
そうだ、広田さんの手にも指輪を嵌めないとな。今夜は眠る時間はないぞ。
「うははは――!!」
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