ビルの階段は薄暗く、俺からは花屋が見えるが、花屋からこちらは見えない。
時折上の階から下りてくる泥酔客にぶつかられたり文句を言われたりしながらも、俺自身俯いて泥酔しているフリをしていた。
通りを行き交う人達の隙間から、見え隠れする手…
その手を見る度に鼓動は高鳴り、息遣いが荒くなった。
広田さんの時は、高山のせいで余韻を楽しむ事が出来なかった。
その高山も、今は作業場のゴミ袋の中だ。邪魔者はいない。
いや…
元々、誰も俺の邪魔等してはならないのだ。
俺の手は奇跡の作品を創造し、何でも切断し一滴の血も流さない。まさに神の技…
俺の使命は天の意思。
俺の行為は神事以外の何物でもない!!
そうして2時間余りが経過し、時計が22時を回った頃、花屋の店員達が店内の清掃を始めた。
ようやく、待ちに待った閉店のようだ…
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