そこは深夜まで営業している、歓楽街の花屋だった。

夜の街には、歓送迎会やホステスへのプレゼント用等の為に、深夜まで花屋は必要なのだ。


頭を下げて店内に戻る女性店員の手を見て、俺は息を飲んだ。

草花を扱う人は手が荒れているものだが、その女性店員の手は草花による傷があるどころか、店内の蛍光灯に照らされて、透き通る様に輝いていたのだ!!


「見付けた」

口元が無意識に緩む…


それは間違いなく、俺がこの歓楽街で探し求めていた手だった。

花束を作る為に慌ただしく動く手先に、俺の視線は釘付けになった。


「何か御用ですか?」

手元を見て固まっている俺に、その女性店員は声を掛けてきた。

「あ、いや別に…」


前髪を払う手が余りにも美しくて、思わずこの場で切り取って持ち帰りたくなる。

我慢だ我慢…
この場で切り落とす訳にはいかない。


俺はその場を離れ、店が見える場所にあった雑居ビルの階段に座った。


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