頭の中にその言葉が何度も繰り返され、その度に直接脳を鷲掴みにされる感覚に吐き気がした。

俺はついに我慢が出来なくなり、その原因だと思われる指輪を急いで外した。


「な、何だこれ・・・
普通じゃないぞ。
欲するものって一体何の事だ?」

その時、俺は骨董屋の店主が言った言葉を思い出した。

″力の代償に失う″

蓋の内側に、ヘブライ文字で彫られている言葉。


力とは、欲するものと同じ意味に違いない。だとすると、代償とは何だ?

代償――・・・か。


俺は指輪を元の場所に差し込むと、ケースを持って店舗の奥にある作業場の扉を開けて中に入る。

作業場は5メートル四方の正方形で、店舗と同じ程の広さだ。

白のタイルに白い壁。窓も無く薄暗いので、室内が少しでも明るくなる様にそうしている。


俺は扉のすぐ横に置いてある黒い作業台を前にして座った。