「そうか。
それで、あんたは俺が捕まるとどうして困るんだ?」
俺は野崎の問いに答える事なく、ジッと目を見詰め返した。
「オッケー、分かった。
それは聞かねぇよ。それで、俺はこれからどうすりゃ良いんだ?」
「まず俺が一度外に出る。今日の服装をしっかりと見せて帰ってくるから、お前は俺の服に着替えて、帽子を深々と被って店を出ろ」
「はあ?
それじゃあ、俺が尾行されるんじゃないのか?」
「大丈夫だ、俺を信じろ」
俺には自信があった…
高山は俺の後を尾行する様な真似は、絶対にしない。なぜなら、奴にはもっと重要な事があるからだ。
「それと、これは旅費だ。暫くこの街から離れた方が良い…」
俺はレジから一掴みの札を渡すと、軽く笑った。
「悪いな何から何まで…
あんたの言う通りにするよ」
馬鹿な男だ。
所詮は、俺の駒でしかないのに…
まあいい。とにかく今は、捕まらずに泳いでいてもらわないと困るからな。
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