俺は新しい力を手にいれた――
これさえあれば、すれ違い様にですら左手を奪えるかも知れない。
それに、百合と高山に制裁を与える時にも、十分に威力を発揮するだろう…
その時、店の方からカウンターをガンガンと叩く音がした。
客か?
客にしては乱暴な呼び出し方だが、とにかく行かなくてはならない。
俺は箱をソファーの下に隠すと、作業場を出て店の方に行った。
「遅せぇぞ!!
お前、商売する気があるのか?」
店に入った瞬間に罵声を浴びせられ、驚いて声の主を見た。
そこにいたのは、20歳前後に見える若い男性で、筋肉質な体型にフィットした黒のTシャツが、より逞しく見せていた。
その男は俺を睨み付ける様に見ると、強い口調で言った。
「ここにはピアスはないのか?
ジュエリーショップなのに、指輪しかないじゃないか!?」
「ピアスですか?
ピアスは生憎…」
そこまで言いかけて、俺は気付いた。
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