開店時刻の10時になり、たまには予定通りに開店しようと扉の鍵を開けた。そして、背伸びをしながらカウンター内の椅子に座った時に扉が開いた。
「いらっしゃいませ」
俯いたまま挨拶をし顔を上げた瞬間、低血圧で不機嫌な俺を更に苛つかせる存在がそこにあった。
「葉山さん、おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」
「た、高山……さん」
そこには、紺色のスーツを着た高山が笑顔で立っていた。
「僕は殆ど眠れませんでしたよ。あの事件の犯人の事を考えていましたから…」
「あの事件…ですか?
何かあったんですか?私は新聞も取っていませんし、世の中の情報には疎くて…」
俺がとぼけた返事をすると、高山は1歩2歩とカウンターに近付いて来てグッと睨み付けてきた。
「葉山さん…
あなたは昨夜、この店にいなかったでしょう。一体何処に行っていたんですか!!
ほら、この電話のコールが、すぐ側の作業場に聞こえない筈がないでしょう!!」
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