俺は作業場に入り紙袋から広田さんの左手を取り出したが、いつもの様な高揚感は無かった。

それはやはり、一連の作業の中で高山に気持ちを切られた事が原因だと言わざるを得ない。

折角、今ここに最高の状態の飾り棚があるというのに、全てが台無しだ。


「高山―――!!」


俺は持ち帰った耳を、鞭を打つ様な音が響き渡る程壁に投げ付け、拳を強く握り締めた。

俺の崇高な使命を邪魔する者は、徹底的に廃除だ!!


俺は左手を飾り台に手を開いた状態で立てると、苛々と作業場をグルグルと回った。

今直ぐにでも処理したい所だが、仮にも相手は刑事だ。そんなに簡単な事ではなかった…


その日は結局、解決の糸口すら見付からないまま朝を迎えた。



しかし、そんな状態の俺に精神的な揺さぶりをかける為、開店と同時に高山が来店した――


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