受話器の向こう側からは、ざわめきの様な雑音が聞こえてきた。それは明らかに、電話の相手が外にいる事を示していた。
「葉山さん…
あなた、一体どこに行っていたんですか?」
聞き慣れない男の声が耳に入り、一瞬たじろいでしまった。
しかし、直ぐに平静を取り戻した俺は、その相手に聞き返した。
「どちら様ですか?
ここはジュエリーショップですよ」
「警視庁の高山です。本当は分かっているんでしょ?」
高山?
なるほど…
今、あの現場にいるという事だな。
これは迂闊な事を口走らない様に、十分に注意して話をしなければならない…
「それで、何か御用ですか?」
「葉山さん、とぼけないで下さい。
今までどこに行ってたんですか?
実は、2時間前からずっと5分おきに、そちらに電話していたんですよ。
一体何をしていたんですか?」
高山がこの店に、ずっと電話をしていた!!
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