「少しは売れてるの?
納得いく物作りも大切だけど、売れる物も作らないと家賃払えないんじゃない?」

「・・・分かってる」


付き合い始めて2年。
俺がまだ独立する前、ジュエリーメーカーのデザイナーをしていた時からの付き合いだ。

当時百合は販売促進チームのメンバーで、よくデザインの部署に出入りしていた。それで知り合い、意気投合して・・・


「敏樹はデザイン力はあるんだけど、加工する技術が弱いんだよね。もう少し柔らかいラインが出せたら、絶対売れると思うんだけど」

百合は入社3年目にも関わらず、販売促進チームの主任に抜擢される程の実力があり、こと分析能力については群を抜いている。

独立して1年。
確かにデザインを気に入ってもらえても、作りが粗いからと買ってもらえない事もある。


「まあ、少しずつ・・・な。
お前の方こそ、こんな所で油を売ってて大丈夫なのか?」