現場を決めると、その民家の車庫に持ってきた紙袋を隠し、再び駅へと戻った。

そして、改札が見える位置に立つと広田さんが出て来る迄待つ事にした。


この駅は小さくて、ロータリーにはタクシーも2台しか待機していないし、駐車スペースも無い。

薄暗くて、隠れているには絶好のシチュエーションだ。


ああ…
広田さんよ、早く帰って来ない。
もう待ちきれない。

だが、あの左手が手に入るんだ。我慢だ我慢…


俺は両拳を手の平に穴が開く程強く握り締め、沸き上がる感情を必死で圧し殺した。

そして21時過ぎ、広田さんが改札の向こう側に見えた――



帰ってきた!!

俺は潜んでいた駐輪場から出ると、走ってあの民家まで行った。

そして呼吸を整えながら、紙袋からオノを取り出した。


駅からここまで普通に歩けば15分。つまりあと10分足らずで、広田さんがこの民家の前を通る…

俺は興奮の余り、オノを持つ手が震えた。


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