18時30分――
俺はタイマーのスイッチを入れると、紙袋にタオルとオノを入れ、いつもの銭湯に向かった。
銭湯に行くと見せかけて、一先ず店の外に出る事が目的だ。
常連であれば知っているが、この銭湯には表玄関以外に勝手口があった。
その勝手口は反対側の道路に面していて、表で張り込みをしているであろう高山を出し抜ける。
しかし、余りにも長過ぎれば当然、怪しまれる。中に入られれば、当然勝手口がある事も知られてしまうだろう…
だが――
それで良いんだ。
ほんの一時でも、離れる事が出来ればそれで十分。
俺が店を出て15分経てばタイマーが作動し、カウンターの上に入口に向けて置いたスタンドが点灯する様にしてある。
高山は、誰もいない店の前で張り込みを続ける事になるのだ。
そして、高山の元に事件の一報が入り、奴が現場に向かった時に、俺は悠々と店に戻る――
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