「銀・・・か?」
抜き取った指輪は、何の装飾もない幅が1センチ、厚みが3ミリ程度の銀の指輪だった。指輪としては単なるリングに過ぎず、古いという以外に価値がある様には見えない。
あの店主はこれを、【サタン・リング】などと大袈裟に呼んでいたが・・・確かに妖しい気配はあるものの、それ程の物だとは思えない。
上蓋の内側を見ると、古代の象形文字に似た文字で何か彫ってあった。
これが、ヘブライ文字なのだろうか?
いずれにしても、これが凄い物だとは思えない。店主に担がれたか・・・
その時、店の扉が勢い良く開いた。
「敏樹いる?」
扉を開けたのは、青山 百合だった。
肩よりも10センチ程長い栗色のストレートヘアーに、栗色の瞳をした少し日本人離れした顔立ち。華奢な身体からは想像出来ない勝ち気な性格で、いつも俺の痛い所を思い切り撃ち抜く。



