「新人のくせに調子に乗ってるよな。」

「でも、あの役を獲ったってことはそれだけ才能もあるんですよね。」

共演者が彼女について口々に言い出す。覆面って、もとから声優は顔を出さないだろ。まあ、プロフィールも出てなかったみたいだし、それだけ徹底してるってことか。

「でも、噂によると彼女自身が希望してるそうですよ。」

それは意外。事務所の意向じゃないんだな。

「それが、声優界にどうしても会いたくない人がいるって噂もあって…」

そんなヤツいんのかよ。てか、どんだけ会いたくないんだ?

「新人の話なんていいだろ?早く始めようぜ。」

「『はいっ。』」

俺の一声によって収録は始まった。