「『マックスビート』。懐かしいね。」

「…和沙が好きだったのよね。」

瑠璃子ちゃんは『和沙』と言った瞬間、気まずそうな顔をした。他のヤツらも苦しそうな表情だ。多分、俺もそんな顔をしてるんだろう。

「…そ、そういえばさ、相手役の声優さんって新人なの?プロフィールが全く無かったんだけど?」

輝、まさかお前が気を使うなんて。それぐらい、月日は過ぎたんだな。

「あー、名草 紗豆香(なぐさ さずか)だっけ?確か、今回のがデビュー作だって話、聞いたことある。まぁ、別々に録ってるから会ったことないけど。」

「へー、その役って結構いい役なんでしょ?すごいね、その子。」

「才能のある子なのね。」

「だな。才能のあるヤツはいいよな。」

「誠司だって才能あるんでしょ。学生のころからやってたんだから。」

それからしばらく俺の仕事の話をした。でも、琉麻だけ何も話さない。