「わわっ、ごめんなさい。前方不注意でした…。」


女はそう言いながらキョロキョロ俺の周りを見渡している。


「何、キョロキョロしてんの」


ただでさえイライラしている上に階段で当たられ、俺の怒りはピークに達していた。


「いや、あのっ。怪我はないかなって思って…。」


「大丈夫だから。いいからさっさと教科書拾えよ。」


そんな俺の声に女は驚いたのか、恐怖したのか…。


「う、あ…はい!ごごごごごめんなさい!!」


女は急いで教科書を拾い、俺にもう一度頭を下げた。

俺、言い方間違えたか?


女が、こっちを見て固まっている。


俺は族の総長だから、俺のことを見てビビっているのかもしれない。


女って分からねえ。



「すみませんでした。以後気をつけます!」


以後って…。またぶつかられんのか…?


それはやだなあ。


そんなことを考えているうちに女は逃げるように去っていった。



―――これが最初の俺とお前の出会い。