コツ、コツ、コツ…
 

私の階段を登る音だけが響く。


屋上で何かをしたいわけじゃない。


ただ、風にあたりたい。


嫌なこと全部忘れて、昔の私に戻りたかった。


桜風と出会ったあの頃…。綺麗な心だった頃に…。


透を愛していた、あの日々に。


キイッ


重たい扉を開いた。


今日は晴天。


こんな日はお母さんとお父さんが亡くなった日を思い出す。


お母さん…。お父さん…。


こんな娘でごめんね。


毎晩、喧嘩を繰り返して。人をボコボコにして。


病院送りにして…。


「花恋!って、どうした??お前、」


裕翔が、いきなり駆け寄ってきた。


「どうして、泣いてんだ…?」


ああ、私泣いてるんだ。なんでかな。


「ごめっ…ゆ、と…。」


声もまともに出ない。


「泣け…。好きなだけ泣いとけ。理由はまだ聞かねえから。」


裕翔は優しい。


こんな私にそんな言葉をかけてくれる。


会ったばかりなのに。


ごめんね、裕翔。今だけは甘えさせてね。