この春、25歳となったあたしは仕事も充実していた。


「今日の集団体操は、11時に始めます。対象の利用者の席配置の準備をお願いします。」


朝のスタッフミーティングで3階フロアのリーダーとして、1日の流れを伝達する役目にもようやく慣れてきていた。


ミーティングが終わり、主任から呼ばれた。

「佐藤さん、お願いがあるんだけれど。」

「はい。」

「明後日、テレビの取材が入るのよ。夕方の情報番組の中の10分位の時間なんですって。〝高齢者の今〟というテーマで、うちの施設が取り上げられるらしいのよ。それで、リハビリの観点から、うちの施設の案内をしてもらっていいかしら。」

「それってテレビに映るってことですか?無理です、無理です!」

そう言うと、主任は苦笑いした。

「佐藤さんは、案内だけでいいから。映るとは言ってないでしょ。」
早とちりした自分に、恥ずかしくてうつむいた。


「じゃ、お願いね。」
主任は、あたしの肩を叩いて事務所へ帰って行った。