少しだけ悩んだが、あたしも手を振り返した。

それに気付いたシンちゃんが先生に軽く会釈した。

先生はまた少し笑って同じように会釈した。

そしてあたしは、先生に話しかけることもなく、近寄ることもなく、シンちゃんとデートを続けた。


「知佳、今の誰?」
シンちゃんが不思議そうに聞いてきた。

「ただのカテキョ。」

あたしがただ前を向き、無表情に答えた。


そう、ただのカテキョなんだ。

だからもうさよならなのだと自分の心に言い聞かせた。


あたしは先生との恋にさよならして、シンちゃんとの新しい道を歩き出した。