終業5分前に、尾上さんがアタシの部署にやって来た。

探すことなくアタシの席までたどり着くと、にっこりと笑った。



「急なんだけど、この後の予定はある」

「いいえー別にありません」

今日は比較的忙しくない日で、時間通りにあがる目処がついていた。
提出する書類の処理もすんで、あとはざっとデスクを片付ければ帰ることができる。


「なら良かった。この前の資料のお礼をさせて。報告だけ入れてくるから、10分後にロビーで待ってて」

うむを言わせず言い切ると、また踵を返してドアから出ていった。