先生との愛を紡ぎあったあの日から、確実に私たちは少しずつ距離を縮めつつあった。

ほぼ毎日のようにメールや電話して。 1週間に1度は英作文を個別で指導してもらう。

指導が終わればお互いへの想いを確かめ合っていた。 また今週も先生のいる英語科準備室に行く。

1週間に1題くらいなら全然負担じゃないし、むしろ先生と過ごす時間が増えてすごく嬉しかった。

「失礼します。」

ドアをノックし、挨拶をして入る。

「おお、待ってたぞ。」

そう言って先生はいつもと同じように椅子を用意してくれる。

私は先生に書いてきたものを渡して椅子に座った。

今回のお題はクローンの是非について自分の考えを述べるもの。

医学部に進むし、書きやすそうだったから選んでみた。

先生が英作文を添削している間、私はぼんやりと先生を眺める。

英文を読む真剣な横顔。

ペンを持つ大きな手。

ところどころに赤ペンを入れる時のなめらかな筆遣いと少し癖にある筆記体。

今日はどのくらい直されるのだろうか?

毎回添削してもらうたびに真っ赤になって手元に返ってくるノート。

自分の出来なさを嫌でも痛感する。 こんなんで本当に合格できるのかとも思う。

でもやるしかない。

私にはその選択肢しか残されていない。