彼の名前は涼斗(あつと)。

背が高くて黒い肌にシルバーネックレス。
やんちゃかぶりしたキャップから
少しはみ出す短めの黒髪。

彼の目は目の前の友人も
初対面のあたしも
なにも見ていなかった。

ただぼーっとしながら
「お疲れー。」と言って
ときどき連れとしゃべるだけ。

落ち着きのある低めのトーンの声が
一瞬で心地よく思えたほどだったけど
一目惚れしたことのないあたしが
それが一目惚れだったのねって
認識するまでの期間は長かった..
そんなことこれっぽっちも
考えたことすらなかったから..
気がつくまで時間がかかりすぎたの。

~If I could have found out then~
“もしもあの時..自分が気付けてたら..?
今は少し違った未来になってた..?”

こんな仮定や空想ばかりの
答えや先の見えない考え事から
離れられないあたしは由美。21歳。

ギャルだね~って言われるのはあまり
好きではありませんが、
見た目が派手なのか、
存在がうるさいのか..よく言われる。

ただ、ギャルっぽいくせに
喋ると落ち着いてるよねー
なんて友達やお客さんに言われるのは
とっても好き。

大学を辞めて販売員のアルバイトをしながら夜はしらけたぱぶで働いている。

前に付き合っていた彼氏には
「俺と会ってるのに
仕事の話ばっかすんなよ!」
と、半年前にふられた。
高校の時に知り合って3年の友達期間を経て付き合ったのに1年半でこの結末。

もちろん付き合おって言ってくれた時のことも誕生日やイベントの時にしてくれたことも全部覚えてるくらい愛情を注いでくれて、人一倍不器用で人見知りなあたしがそれに応えようと普段できないことも頑張れるほど大好きだったけど
仕事仕事で会える時間もほとんどなく、仕事で出来てるあたしの生活には仕事の話しかネタなんてなくて..

両立できなかった自分を責めました。

だからといって、別れてからも
仕事の生活サイクルは変わらないし
むしろ重荷に感じたほどで..
塞ぎこむほどへこんでたわけでもなく、
なにに不満を抱くわけでもなく、
ありきたりな毎日に満足してた。