「ほ、ホク…顔、近い……」


「アイツがどんな思いでお前の傍にいるのか、お前はわかっているのか?
どんな気持ちで、お前に須藤が好きと聞いたのか……」


「…ホクが何を言っても、オレは真帆が好きだ。
アイツ―――美空に、嘘はつけない」


「…………」





パッと、オレの襟元から手を離すホク。

そして大きく、溜息をついた。





「……キクは…何も、わかっていないスよ」


「は?」


「転校生の思い。
キクは全くわかっていないスよ!

……最低スよ、キクは」


「……ホク…」


「……夜中に呼びだして悪かったスね。
俺はもう、帰るスよ」




蓋の開けていないお茶を持って、ホクは歩いて行く。






「…ホク、ごめん……。
ホクの過去も記憶も、オレが欲しいって言ったから、お前は……」






オレはわかっていない。

美空の気持ちも、ホクの思いも。