「ほら、アイツって親いないじゃん?」
……え?
きーくんの言葉に、あたしは固まった。
親が、いない?
共働きだとか、親の仕事の都合で11年前に引っ越してきたとか言っていたじゃない。
親がいないってどういうこと?
「あれ?
もしかして美空、アイツの親がいないってこと知らなかった?」
「うん…。
いるかと思ってた。
ずっとそういう風に話していたし」
「そっか。
だからオレは思うんだよ。
アイツは独りになるのが嫌いだって。
親がいないなんて、アイツの口からは一言も言わない。
美空の言うように、いるように振る舞って話す。
本当は親がいないって現実、寂しいと思うんだよな」
「……そうだったんだ…」
初めて知った。
「11年前だったかな…アイツの親が亡くなったのって」
11年前。
さっき聞いた、如月がこっちに引っ越してきた年だ。
11年前だったんだ…。


