ところでその例の“如月くん”って誰?

くんって言うんだから男子だろうけど。

ここは共学高校だから、クラスに男子や女子は半分ずついる。

教室の半分を占める男子の中から“如月くん”を探すのは難しいな。





「じゃあ西川さん。
何かあったら如月くんに色々聞いてね」


「……へ?」


「じゃあこれにてホームルームは終わり。
1時間目の授業に遅れないようにねー」




ちょ、ちょっと待って!

あたしの叫びも空しく、担任は行ってしまった。

…如月くんって一体、誰なの!?

「あの子です」とか言ってくれないわけ!?




どうやら1時間目は移動教室らしく、皆がそれぞれ仲の良い子たちと固まって、教室を出て行く。

1時間目の教科って何?

昨日学校に電話した時「持ってきて」と言われた教科書は全部持ってきたから、きっとその中に1時間目の教科もあるんだろうけど。

5教科の中から1教科を探すのは困難に近い。

時間割表なんてものも、貼っていないし。

…1時間目から遅刻になってしまうぞ、あたし。




誰かに声かけないと。

待っていたら駄目だ。



そう思って顔を上げると。

…教室中は誰もいなくなっていた。