「今日から皆の仲間になる、西川(にしかわ)さんです。
西川さん、自己紹介を」
小学生かよ。
…そう内心突っ込みながらも、あたしは笑みを浮かべた。
「西川美空(みそら)です。
よろしくお願いします」
「西川さんはお父さんの仕事の都合で引っ越してきたそうですが、以前はこの地域に住んでいたようです。
ですけど慣れないことも多いと思いますので、皆さん仲良くしてあげてくださいね」
これが小学生ならば、「はーいっ!」なんて元気なお返事があったんでしょうが。
ここは市立の高校だから、聞こえるのは団体感ゼロの拍手だけ。
…早く自己紹介終わらないかな…。
「じゃあ案内役を決めましょうか。
誰にしましょうかね?」
そんなあたしの気持ちを知らない先生は、教室全体を見渡す。
もしこれが美少女とかだったら、男子とか手を挙げていたんだろうけど。
生憎あたしは美少女とは程遠いから、それは不可能。
「じゃあ隣の席になる、如月(きさらぎ)くんにやってもらいましょうかね?」
如月くん?
かっこいい名字しているじゃないの。
あたしは好きだよ、如月って名字。
西川という平凡な名字よりも綺麗で。
全国の西川さんには失礼だけど。