『この人、凄くかっこ良くない?』


『美空、この人好きなの?』


『うん。
あー、こんな素敵な人に会いたいなぁ』





漫画を抱きしめ、緩み切った笑顔を見せる美空。

俺はその漫画の題名を覚え、家に帰ってじーちゃんに頼んで買ってもらった。

そして熱心に、読みふけった。

多分、それからだと思う。

俺の部屋が図書館並みに、本が溢れかえる部屋になったのは。



美空の好きな漫画を読みこみ、一緒に話そうとした矢先。

美空が引っ越すことを聞かされた。

そのため、美空とあの漫画について話し込むことなど出来なくなってしまったが。

…あの漫画を、美空は覚えているだろうか?

俺が読みすぎて、いつの間にか口調が移ったことも。





…やっぱり止めた。

影響されたなんて簡単な理由で、俺の口調が変わったなんて知ったら。

美空に馬鹿にされかれない。

美空が気がつくまで、黙っておくことにしよう。





「そういえば、あの漫画覚えてる?
引っ越す前に、北斗に教えた漫画。

あの漫画の登場人物に、北斗に似た人いたよね?」


「……き、気のせいじゃないスか?」





10年前から好きだった彼女に

バレるのは時間の問題…かもな。








【END】