菊人くんが真帆を好きだと、きっと如月は知っていた。
あの時知らないと言ったけど、きっと知っていた。
好きな子がいる菊人くんに、恋をしていたあたし。
そんなあたしに10年も前から恋をしていた、如月。
…同じだったんだ、如月も、あたしも。
好きな子がいる人に恋していたのは。
だから叶わないとわかった恋でも。
如月はあたしに、「ガンバレ」と言ってくれた。
…言う時、凄く辛かったはずなのに。
あたしの恋を、応援してくれた。
「……馬鹿だよ、如月は。
どうして如月こそ、好きな奴を応援しているわけ?
自分の方が、傷ついているじゃない」
「……例え俺が傷つく結果になったとしても、美空が幸せなら、俺は良かった」
天井を見上げて、両腕で自分の目元を隠す如月。
…10年間、ずっと思い続けてくれた。
叶わない、涙で終わる結末になったとしても。
自分が傷つく結末を迎えたとしても。
如月はずっと、あたしの傍にいてくれた。
「……ありがとう、如月」
「ただ、不器用なだけスよ、俺は」
「如月は不器用じゃないよ。
例え不器用だとしても、如月はカバー出来る優しさを持っているよ」
「……ありがと」
あたしの好きな人は
誰よりも不器用だけど
誰よりも優しい人でした