彼女を見送って数分経った頃。

アイツ―――キクが言いだした。





『なぁホク。
お前の過去、オレにちょうだいよ』





信じられなくて断った。

彼女との思い出が詰まった過去。

簡単に捨てられるわけなかった。





『オレ、知っているんだよ?
ホクに、叶えてほしい願い事があること。

ホクの両親が亡くなった理由、調べてほしいんでしょう?』


『キク…何でそれを……』


『ホクがお祖父さんと一緒に、警察に何度も通って、事故の原因をもう1度調べてほしいってお願いしていること、知っているよ。

オレの父さん、警察だから』


『…………』


『ホク。
オレね、美空のことが好きなんだ。

だけど美空はオレのことはキクくんって呼ぶのに、ホクだけ“きーくん”だろ?

美空は間違いなく、ホクのことが好きだよ。
だから美空が好きだって言うホクの過去、オレにちょうだいよ。

そうしたら父さんに頼んで、ホクの両親の亡くなった原因、調べてあげるよ』





キクの提案したその条件を、俺は飲んだ。

両親の死んだあの事故が、仕組まれた罠ならば。

両親を殺した奴らを、この手で制裁したいと思ったから。