「……きーくん」
その声に、ピタッと足が止まった。
「……きーくん、待って。きーくん」
足と同じく無意識のうちに、振り向いてしまう。
「きーくん。
あたしを置いて行かないで、きーくん」
「…何をっ……」
「あたしは置いて行かないよ、きーくん。
かつて1人で遊んでいた、きーくんを」
『何しているの?
ミソラと一緒に遊ぼうよ!』
不意に蘇る、幼き頃の記憶。
目の前にいる彼女と、あの時の“キミ”が重なる。
「……美空…」
もう2度と離さない。
遠くになんて、行かせない。
抱きしめ返してくる初恋の彼女を、
俺は優しく抱きしめた。


