☆北斗side☆
『過去をオレにくれないか?』
そうアイツから言われた時、俺は信じられなかった。
過去なんて、簡単にあげられるほど安いものじゃないと思っていたから。
過去を消せないこと、俺はよく知っていたから。
『お前の願い事、叶えてやるよ。
オレなら、叶えることが出来るから』
過去はモノじゃない。
簡単にあげられない。
最初は断った俺だけど、結局はあげた。
俺の過去は、アイツのものになり、
アイツの過去が、俺にものになった。
今考えれば、当時俺が叶えたかった願い事はちっぽけだった。
叶えてもらったとしても、結果は変わらないと、今ならわかる。
だけど、俺はアイツの条件を飲んだ。
結果が少しでも変われば良いと、信じていたから。
過去をあげた俺の過ちが。
目の前で俺の顔をジッと見つめる彼女を傷つけることになるなど、俺はわかっていなかった。
本当に馬鹿だった、過去の俺は。


