「……ねぇ、如月」



あたしはボソボソと、呟くように問いかける。




「あたしは何を、信じれば良いのかな?」




返事はないけど、聞いている前提で話す。




「あたしね、ずっと幼馴染の“きーくん”は、渡村菊人くんだと信じていたの。
きーくんってあだ名にも合っているし。

だけど、昨日如月の家に行ったとき、ふたり言い合いしながら言っていたよね?
如月の過去を、菊人くんにあげたって。

もしかしたら菊人くんが“きーくん”じゃなくて、
如月が“きーくん”なんかじゃないかって思い始めてきたんだ。

あたしはずっと、引っ越してから今まで、“きーくん”が好きだったの。
だから高校に入って、“きーくん”に会えて嬉しかったんだ。

ねぇ如月。
あんたなら知っているよね?

あたしが好きな幼馴染の“きーくん”は、誰なの?」




如月は、クイッと顔を上げて、真っ直ぐあたしを見てきた。

だけど見てくるだけで、何も言ってこない。





「如月なら知っているよね?
今の数学の答えみたいに、わかるよね?

“きーくん”は誰なの?
本当に菊人くんなの?

“きーくん”は、如月じゃないの?」


「……黙れッ」





突然如月が立ちあがる。

説明していた先生や、クラスメイトの視線が、一瞬にして集まった。