次の日。

あたしはぼんやりと、数学の授業を受けていた。




昨日の帰り道。

きーくんは何も話さなかった。

そのまま、無言のまま別れた。

何を聞いても、無視されてしまった。




そして今日。

隣の席で如月は何もなかったかのように寝ていて、

きーくんも同じように授業を受けていた。





きーくんと如月は…過去に何があったんだろうか?

そして何で、あたしが関わっているのだろうか?

如月がきーくんに過去をあげたって、どういう意味なのだろうか?

そして何で如月は、きーくんに過去をあげたのだろうか?





「……わかんないなぁ」




数々の疑問は、今受けている数学の授業内容よりも難しい。

ふたりが話してくれない限り、あたしは何もわからない。




だって恐らく、ふたりの間に何かあったのは、

あたしが引っ越してから再びこの地に戻るまでの10年という長い間の出来事だから。

きっと、真帆も何があったのか知らない。




10年の間であたしが仲良かったのは、“きーくん”と呼んでいた幼馴染だけなのだ。

でも、何だか不安がある。




あたしが幼馴染だと言う“きーくん”とは、

本当に渡村菊人くんのことなのだろうか……?