「あの…ふたり、とも?」




ふたりは黙り込んでしまった。

…どういうことなの?

状況も、言い合う理由も、あたしはわかっていない。



だけどわかるのは。

ふたりが言い合う理由に、あたしが関わっているということ。

如月が、きーくんに過去をあげたという、信じられないこと。

きーくんは何があっても、真帆が好きだということ。





「…ごめん、美空」


「きーくん?」


「……違う」


「え?」


「オレは、きーくんじゃない。
美空が言う本当のきーくんは、オレじゃない」


「どういうこと……?
きーくんも如月も、どうしたの?」




意味が、わからない。

きーくんは、誰なの?

渡村菊人くんじゃ、ないの…?





「……もう、帰ってくれっス」


「如月……?」


「転校生も、キクも。
何も言わずにさっさと帰れ」





立ち上がった如月は、先ほど現れた本棚の影に引っ込んでしまった。





「……行こうか、美空」


「うん……」





あたしは、“きーくん”と一緒に、如月の家を出た。