大人しく隣に座ると、ニヤニヤしてるあたしを見て剛も笑う。

「何ニヤニヤしてんの」

「幸せだな、と思いまして」

「そうですか」

「そうですよ」

幸せですよ。

こんな当たり前の日常が。

こんなにもキラキラして見えるのは、隣にあなたがいるからですよ。

学生みたいなこと考えてますけど、きっといくつになってもそんなもんなんですよね。大人も一緒。


「智美さん」

「ふふ、何ですか剛さん」

いつもみたいに右側の口角をクッとあげた彼が、こっちを見て言う。

日が当たって、その表情でさえ綺麗だ。


「中村になりませんか」

こっちを見る剛はいつもよりずっと優しい顔をしてて、涙がジワリと浮かぶ。

「あの…それは…」

「結婚しませんか」

しませんか、なんて聞くくせに彼はもう返事が分かってるみたいで。

「ずっとそばにいてくれませんか」

幸せそうに見えるのは、きっとあたしの見間違いじゃないよね。


「あたしでよければ、喜んで」

涙でグチャグチャになったあたしを笑って抱き寄せた彼は、今までで一番嬉しそうで、幸せそうだから。

-END-