「……あの、大丈夫?」

目の前に正座する蓮くんは、改まったあたしを見て少し緊張したようにいつもと同じ笑顔を作ろうとする。

そんな蓮くんを見て、何だか少しだけ申し訳ない気持ちになる。

だって、こんな深刻な話をするような雰囲気を作っておいて、これから話すことはあたしにとっても、多分蓮くんにとってもいいことなはずだから。


結婚してちょうど1年くらい。

もともと蓮くんが住んでいたマンションの別の部屋に、今は一緒に住んでる。

少し上の階になって、部屋の数も増えたその場所はあたしの帰る場所であり、蓮くんが帰ってくる場所。


結婚式を無事に終えて2人の生活がスタートして、正直喧嘩することもたまーにあるけど、周りにラブラブだと言われるくらいには上手くいってる。

変わったことといえば、毎日そばに居られることとか、1人で寝ることがなくなったこととか。

自分たちでも自覚してるほど仲がいいと思うし、むしろ結婚する前よりもずっと距離は近くなった。


「あのね、大事な話があって」

「うん、それさっきも聞いたよ」

「そうなの」

「話進まないね」

ふにゃんと笑う蓮くんは少し緊張も解れたみたいで、今度はあたしの様子を見て可笑しそうに笑う。