わたしの唇の温度で、やや滑らかになったアイスの先端を、蒼ちゃんは綺麗な舌で舐めた。
その横顔、釘付けになる。


こんがりと日焼けした野球部員が数名、目の前を通り過ぎた。ぼんやりと目で追っていた蒼ちゃんは、「純」わたしの名前を呼ぶ。


「もし青があったら、食ってみる?それとも、曖昧なままにしとく?」


意味深なセリフ、耳を奪われる。
手にしたアイスキャンディが、ぺっちゃりと、地面に落下した。


「なぁ、純。」


更に追い込まれて、なす術なく空を仰ぐ。

わたしは6月生まれだから、親が洒落で、純と名付けた。あと数週間遅ければ、ジュライという名だったかもしれない。…というのはどうでもよくて。
蒼ちゃんは、わたしが小学校に上がる前。空がとても青い日に生まれたから、蒼大と名付けられたこと、わたしは知っているんだよ。


年の差5つ、幼なじみ。


「た、食べてみる…」
「言質。とったから」
「……」


棒をくわえた蒼ちゃんは、表情ひとつ変えず、足元で溶けゆく白のアイスキャンディに眼差しを向ける。

「夕立がきそうだね」と、わたしが言ったら、「そうだな」と蒼ちゃんは、真っ青に晴れた空を見上げた。