手を引っ張るのは祐介。



何?


やっぱり昨日のバレてたのかな。



空き教室に二人で入った。



「俺の話、聞いてくれるか」



あたしに?


「うん。」


祐介は窓辺に背中を置いた。

あたしは机に座って。




「俺前に憧れてる人がいるっていったろ?」


「うん。」


幻滅したって?



「その人に昨日会ったんだ」


「うん。」



「昨日は負けるつもりなかった。組が居たとしても」



「うん。」



「でも、相楽正吾(サワラショウゴ)っていう、若頭まで来ちまってよ。完全に組も本気だった。

だから、もしかしたら俺たちの誰かが殺られちまうんじゃねえかって、ただじゃ済まねえだろうなって思っちまって。

勝つ気でいたのに、そんとき迷った。総長なのにだ。



本当に失格だよな。



でもそんとき、その迷いを全部吹き飛ばしてくれた人がいた。


俺の憧れの翼龍。」



その時、祐介が少し笑った。


罪悪感が血液と共に体中を巡った。