翼に ―大切な敵―






羽嶋徹允(ハジマテツヤ)さん。


今年70だったかな。


羽嶋さんは、奥さんもいて、息子さんも居るのにあたしも育ててくれた。



息子の羽嶋和人(ハジマカズト)さんは羽龍の初代総長さん。


今は高校の教師をやっている。

和人さんも、あたしを本当の妹みたく世話してくれた。



だから、頭をどれだけ下げても感謝しきれない。



「奏さんに私が会うのは、2年前ぶりかな。すまないね、顔を出せなくて」


「いいえ、お忙しいのですから仕方がありません。それに、徹允さんが働いてくれているからこそ、こうやって私はいれるんです。なのに、今回……」



「なにも心配しなくていいんだよ。いつかはバレること。そう私も分かっていた。でも、和人の微笑んだ顔、君の微笑んだ顔を見たら教師なのにすごく幸せでね。君が、やりたいことをやりたいだけやりなさい。君は我慢しすぎるほど我慢した。だからもっと甘えていいんだよ?ね」




「っ…」



「あぁ、すまないね。いつも僕は君に会うと泣かせてしまうね。会えるときに伝えたいことを伝えたくなってしまって。」



「…っ、いいんです。えへへ、徹允さんが若かったらあたし告白してますね」



「ふふふ、嬉しいことを言うね。」



「あ、でも、知恵さんには勝てないや」



「ふふ」




知恵さんは、徹允さんの奥さん。



とーっても徹允さんは知恵さんを愛してるの。幸せそうで。

家族の笑顔は大好きなのあたし。



喧嘩ばっかりして、血浴びてきた人の言える言葉じゃあないんだけどね。