翼に ―大切な敵―




そう言ってあたしの目の前に出されるテストの束。



「はーい。」


「お前、嫌がんねえのか?」



意外だったのか動きを止める拓真。



「あたし、知り合いに高校教師多いからさ。愚痴とか聞いてるし。大変ってことは少しは分かってるつもり」




和人さんも、宙也も。



宙也の場合まだ、担任まではなれてないけど。


「男か?」



「あ、残念ながら女じゃないから紹介できないや」


「はあ?そんなこと言ってねえだろ」



「そう。」



あたしはバックから赤ペンを出す。


「だんだん夏休みだね。」


「あぁ」



「拓真なんか予定あんの?」


静かだからちょっとした世間話。



「ねえよ」


「ふーん。」



「お前は?」



「うーん。特にない」


「悲しい夏休みだな」



「うん」






「じゃあさ拓真」


「なんだよ」


「どっか連れてって。」



「はあ?」



ふざけて笑いながら言うと、拓真も片眉さげて微笑む。